みんなの資産設計
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返戻率の谷は価格表——貯蓄型保険の推移表の読み方

貯蓄型保険の返戻率が序盤に低いのは、契約時の経費を長い期間で回収する設計だからです。公開されている推移表を並べ、100%に届く年、低解約返戻金期間の段差、前提利率、年率換算の4点から読み方をまとめました。

記事番号D-02
公開日2026.10.14
執筆・監修編集部・ヤマト
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  • 貯蓄型保険の返戻率が序盤に低いのは、契約時にかかった経費(販売手数料やシステム費など)を長い期間で回収する設計だからで、途中でやめるとその未回収分が解約返戻金から差し引かれる。金融庁の資料にもそう書いてある
  • 推移表の「払込累計−解約返戻金」は、その年にやめた場合の値段として読める。ただしその中には、それまで受けていた死亡保障の対価も入っている
  • 見るのは4点。100%に届く年、低解約返戻金期間が終わる年の段差、前提にしている利率、返戻率を年率に直した数字

返戻率7割は「損」なのか

貯蓄型の保険に入って数年たったころ、証券や契約者サイトで解約返戻金を見て驚く人は多いはずです。5年、7年と払い続けて、返戻率が6割台や7割台。払ったお金の3割前後がどこかへ消えたように見えます。

これを「損をした」と読むと、次の判断を誤りやすくなります。解約すれば損が確定する、だから続けるしかない。あるいは逆に、こんな商品はさっさとやめるべきだ。どちらも、数字の意味を取り違えたまま結論に飛んでいます。

この記事では、序盤の低い返戻率を、契約にかかった費用が年ごとにどれだけ残っているかを示す「価格表」として読む方法を書きます。

序盤が低い理由は、金融庁の資料に1行で書いてある

金融庁の「2025年 保険モニタリングレポート」(2025年7月)の脚注に、仕組みがそのまま説明されています。

生命保険においては、初年度販売手数料やシステム開発費等の新契約費を、長期の保険契約期間にわたって平準的に回収する設計となっている。

続けて、顧客の都合で短期(おおむね10年以内)に解約する場合は、この新契約費の未回収額の一部を解約返戻金から「解約控除」として回収する仕組みだ、と書いています。

金融庁は外貨建保険の共通KPIの注記でも、契約後の早い段階に解約した場合の解約返戻金は「一定額の解約控除等により、一時払保険料を下回る場合が多く」あると書いています。

つまり、契約した瞬間に会社側では大きな経費が出ていて、それを毎年の保険料から少しずつ取り戻していく。途中でやめれば、取り戻しきれていない分を解約返戻金から差し引く。序盤の返戻率の低さは、この「まだ回収していない経費」の大きさをほぼそのまま映しています。

手数料そのものは書類のどこにも書かれていません(詳しくは手数料の高い保険の見抜き方)。それでも、費用を差し引いた結果である解約返戻金の推移は、設計書や契約概要に必ず載っています。率が開示されていないなら、結果の数字から逆算するしかない。推移表を価格表と呼ぶのはそういう意味です。

公開されている推移表を並べてみる

各社の公式資料に載っている例を、条件を書き添えて並べます。契約年齢も払込期間も違うので、商品同士の優劣を比べる表ではありません。形を見るための表です。

経過年数 米ドル建終身A(特則なし) 米ドル建終身A(低解約返戻金特則付) 米ドル建終身B 円建積立保険C
3年 64.4% 43.9% 59.7% 100.0%
5年 75.2% 52.4% 73.1% 100.0%
7年 81.1% 57.2% — 105.4%
10年 87.2% 62.5% 86.8% 110.0%(満期)
15年 93.0% 68.4% 92.2% —
20年 99.6% 98.2% 97.7% —
30年 120.8% 128.7% 110.6% —
  • A:メットライフ生命の米ドル建終身保険の契約概要(2026年10月現在)。40歳男性、保険金額10万米ドル、60歳払込満了、月払。積立利率は最低保証の年3.00%で一定と仮定、解約控除差引後。返戻率は米ドルベースで、契約概要の表記どおり(小数第2位以下は切り捨て。たとえば7年目の特則付は10,824÷18,900=57.27…%を57.2%と表記)
  • B:ソニー生命の米ドル建終身保険のパンフレット(2024年10月版)。35歳男性、保険金額10万米ドル、65歳払込満了、月払154.90米ドル。パンフには金額だけが載っているので、率は編集部計算(解約返戻金÷払込累計)。米ドルベース
  • C:明治安田生命の5年払・10年満期の積立保険。保険料率は2026年8月1日現在、年齢・性別に関係なく同率と公式に掲載

Cだけ形がまるで違います。3年目から100%で、谷がありません。死亡保障をほとんど持たない短期の積立商品だからで、比べる相手としては極端です。それでも「谷の深さは商品の作りで決まる」ことは、この1列でよく分かります。

推移表の読み方

① 100%に届く年を探す

Aの特則なしは20年目でも99.6%で、払込累計にわずかに届いていません。Bは20年目97.7%、25年目に103.8%。払込累計を初めて上回る年が遠いほど、契約初期に乗っている費用が厚い、と読めます。

5年目、10年目、払込満了時の3点を書き出しておくと、手元の設計書でも形がつかめます。

② 低解約返戻金期間の「段差」を見る

Aの低解約返戻金特則付は、15年目68.4%から20年目98.2%へ、30ポイント近く跳ねています。払込期間中の解約返戻金を特則なしの7割程度に抑える代わりに、保険料を安くした設計です(この例では月払239.60米ドルが225.00米ドルになる)。

この段差は、続ける人には有利で、途中でやめる人には不利に働きます。払込満了の数年前に解約や払済を考えるなら、段差の手前にいることを先に確かめてください。払済に変えた場合も、低い返戻金をもとに保険金額が計算されるため、変更後の保障は小さくなると約款・しおりに書かれています。

③ 前提の利率がどの列か

Aの契約概要には、積立利率3.00%・3.50%・4.00%の3列が並んでいます。30年目の返戻率は120.8%・136.2%・153.3%。同じ商品で30ポイント以上の幅があります。最低保証は3.00%の列だけで、ほかの2列は仕組みを説明するための例示だと注記されています。

提案書で一番右の列だけを指でなぞられたら、左端の列も見る。それだけで、受け取る印象はかなり変わります。

外貨建ての場合は、ここに為替が乗ります。表の返戻率は米ドルベースで、円で払い込み円で受け取れば、為替相場の変動に加えて為替手数料が往復でかかります(Aは公式資料で円入金TTM+50銭、円支払TTM-50銭)。

④ 返戻率を年率に直す

返戻率は「何年かけてそうなったか」を無視した数字です。120.8%と聞くと2割増えたように見えますが、20年かけて払い込み、さらに10年置いた結果です。

Aの特則なし・3.00%の列を、毎月の保険料と30年目の解約返戻金で年率に直すと、編集部計算で約0.9%(米ドルベース、税・為替手数料を考慮しない)。Bの30年目110.6%は約0.7%でした。払込期間を通じて死亡保障を受けているので、その対価が引かれた後の数字です。同じ計算をCの10年満期110.0%にかけると約1.3%で、谷のない積立型の方が年率は高く出ます。

「払込累計−解約返戻金」を値段として読む

推移表から、各年にやめた場合の差額が出せます。Aの例で7年目なら次のとおりです。

  • 特則なし:払込累計20,127米ドル − 解約返戻金16,332米ドル = 3,795米ドル
  • 低解約返戻金特則付:払込累計18,900米ドル − 解約返戻金10,824米ドル = 8,076米ドル

この差額が、7年目にやめる場合の「値段」です。中身は、まだ回収されていない契約時の経費、解約控除、そして7年間受けてきた10万米ドルの死亡保障の対価が混ざったものです。全部が手数料ではありません。保障を受けていた期間の分は、掛け捨ての保険料を払っていたのと同じ性格のお金です。

だから、差額が大きいこと自体は不正でも失敗でもありません。問題になるのは、保障が要らなかったのに貯蓄のつもりで入っていた場合です。その場合、差額の大半は「使わなかった保障」と「回収途中の経費」の値段ということになります。

手元の契約で確かめる

  1. 証券、設計書、契約者向けサイトのどれかで、解約返戻金の推移表を手に入れる。なければ保険会社の窓口に「今日解約した場合」と「払込満了時」の金額を聞く。外貨建てなら外貨額と円換算額の両方
  2. 解約控除がかかる期間(「払込年月数10年未満」など)と、低解約返戻金期間がいつ終わるかを書き留める。どちらも終わる年に返戻金が段差で増えることがある
  3. 推移表の前提(利率、為替、配当の有無)を欄外の注記で確かめる
  4. 続ける、払済、減額、解約を同じ日付・同じ前提の数字で並べる

当サイトでは、資産を増やす役割は証券口座に、保険は保障の最低限に、と分けて考えています。その物差しで手元の契約が「保障より貯蓄の比重が大きい」と分かったら、保険料を止めて保障を小さく残す払済や、保険金額を下げる減額も比べる対象に入ります。ただし低解約返戻金期間中や解約控除期間中は、どの選択肢も不利になりやすい。段差の年がいつかを先に見ておくと、判断を急がずに済みます。

そもそも死亡保障がいくら必要なのかは、家族構成と収入で決まります。自分の数字で試算すると、手元の保険金額が多すぎるのか足りないのかが見えてきます。

出典

当サイトは保険募集人・金融商品取引業者ではなく、特定の保険商品の募集・勧誘・推奨や投資助言は行いません。掲載した推移表は各社の公開資料の例示で、ご自身の契約の数値は設計書・保険会社の案内で確認してください。

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