- 生命保険料控除は「所得から差し引く額」で、税金がその額だけ減るわけではない。新制度で一般生命保険料の枠を使い切っても、減る税金は所得税率10%の人で年6,884円、20%の人で年10,968円(編集部計算)
- 一般・介護医療・個人年金の3枠を全部使い切っても、所得税率5%で年13,126円、33%で年47,432円、45%で年62,134円が上限
- 新制度の各枠は、年間の保険料が8万円を超えると控除額が増えない。保険料を増やしても税金はそれ以上減らないので、控除は保険に入る理由にならない
控除額と、減る税金は別の数字
年末に届く「生命保険料控除証明書」や、保険の募集資料にある「最大12万円の控除」という言葉は、所得税を計算するときに所得から差し引ける額のことです。
減る税金は、その控除額に税率を掛けた分です。
- 所得税で減る額=所得税の控除額×所得税率×1.021
- 住民税で減る額=住民税の控除額×10%
所得税率に1.021を掛けるのは、所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかっているからです(2026年分)。住民税の所得割は、総務省の説明で道府県民税4%、市町村民税6%の合計10%です。
控除額12万円と聞いて12万円得をする、とは考えないこと。この記事は、その差を実額で並べます。
新制度の控除額表
2012年1月1日以後に結んだ契約は「新制度」です。生命保険は3つの枠に分かれ、枠ごとに控除額を計算して足します。
- 一般生命保険料:死亡保険、学資保険など
- 介護医療保険料:医療保険、がん保険、就業不能保険など
- 個人年金保険料:税制適格特約を付けた個人年金保険
所得税(国税庁 No.1140)
| 年間の支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 20,000円以下 | 支払保険料の全額 |
| 20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料×1/2+10,000円 |
| 40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料×1/4+20,000円 |
| 80,000円超 | 一律40,000円 |
3枠の合計の上限は12万円です。
住民税
| 年間の支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 12,000円以下 | 支払保険料の全額 |
| 12,001円〜32,000円 | 支払保険料×0.5+6,000円 |
| 32,001円〜56,000円 | 支払保険料×0.25+14,000円 |
| 56,001円以上 | 28,000円 |
各枠28,000円、3枠の合計の上限は70,000円です(中央区の案内)。3枠とも上限まで使うと84,000円になりますが、70,000円で頭打ちになります。
表を見ると分かるとおり、保険料が増えるほど控除額の増え方は鈍くなり、所得税は8万円、住民税は5.6万円を超えたところで止まります。
税率別の実額
所得税率ごとに、減る税金を計算しました。所得税率は、給与から各種控除を引いた後の「課税所得」で決まります(国税庁 No.2260)。
| 所得税率 | 課税所得の範囲 | 一般の枠だけ使い切る(所得税4万円・住民税2.8万円) | 3枠とも使い切る(所得税12万円・住民税7万円) |
|---|---|---|---|
| 5% | 〜194.9万円 | 4,842円 | 13,126円 |
| 10% | 195万〜329.9万円 | 6,884円 | 19,252円 |
| 20% | 330万〜694.9万円 | 10,968円 | 31,504円 |
| 23% | 695万〜899.9万円 | 12,193円 | 35,180円 |
| 33% | 900万〜1,799.9万円 | 16,277円 | 47,432円 |
| 40% | 1,800万〜3,999.9万円 | 19,136円 | 56,008円 |
| 45% | 4,000万円以上 | 21,178円 | 62,134円 |
計算例(税率20%、一般の枠だけ):40,000円×20%×1.021+28,000円×10%=8,168円+2,800円=10,968円(編集部計算、円未満四捨五入)。
年収と所得税率の関係は、家族構成や社会保険料で変わります。当サイトの計算機と同じ前提(会社員・扶養なし、2026年分の給与所得控除と基礎控除)で編集部が計算した目安では、年収500万円で5%、600万円で10%、700万〜1,000万円で20%、1,200万円で23%、1,500万円以上で33%の帯に入ります。
会社員の多くは、一般の枠を使い切っても年1万円前後、3枠を使い切っても年2万〜3万円台です。
保険料を増やしても、減る税金は増えない
一般生命保険料の枠で、年間の保険料を変えたときに減る税金を並べます(編集部計算)。
| 年間の保険料 | 控除額(所得税/住民税) | 減る税金(税率10%) | 減る税金(税率20%) | 保険料に対する割合(税率20%) |
|---|---|---|---|---|
| 24,000円(月2,000円) | 22,000円/18,000円 | 4,046円 | 6,292円 | 26.2% |
| 36,000円(月3,000円) | 28,000円/23,000円 | 5,159円 | 8,018円 | 22.3% |
| 60,000円(月5,000円) | 35,000円/28,000円 | 6,374円 | 9,947円 | 16.6% |
| 80,000円(月約6,700円) | 40,000円/28,000円 | 6,884円 | 10,968円 | 13.7% |
| 120,000円(月1万円) | 40,000円/28,000円 | 6,884円 | 10,968円 | 9.1% |
| 240,000円(月2万円) | 40,000円/28,000円 | 6,884円 | 10,968円 | 4.6% |
年8万円を超えると、減る税金は一定です。月1万円の保険料を月2万円に増やしても、税金は1円も多くは減りません。
逆の見方をすると、年12万円の保険料で戻る税金が10,968円なら、保険料の約9%です。保険料の残りの91%は、保障の対価として納得できるかどうかで判断することになります。
当サイトの記事手数料の高い保険の見抜き方では、ネット生保1社が公表している内訳で、保険料の2〜4割が経費部分(付加保険料)だった例を紹介しました。控除で戻る1割前後より、保険料に含まれる経費の方が大きい商品もある、という比較の物差しになります。
枠を埋めるために入る、は順番が逆
「個人年金の枠が空いているから」「介護医療の枠が空いているから」という理由で新しい契約を勧められることがあります。
個人年金保険の枠を使い切るには、年8万円(月約6,700円)の保険料が要ります。税率20%の人で、戻る税金は年10,968円です。年金を受け取るまでの十数年〜数十年、この保険料を払い続ける前提で、商品そのものの利回りと途中解約時の返戻金を見る必要があります。個人年金保険料控除の対象になるには、年金の受取開始までに10年以上定期に保険料を払う、原則60歳以降に10年以上の年金を受け取る、といった要件もあります(国税庁 No.1141)。
医療保険も同じで、介護医療の枠を使うために入るものではありません。必要かどうかは、高額療養費の上限と手元の預貯金で先に決まります。この点は高額療養費の上限は月いくらかで計算しています。
23歳未満の扶養親族がいる場合
国税庁 No.1140によると、2026年分の所得税から、23歳未満の扶養親族がいる人は、新制度の一般生命保険料の控除額の計算が次のように変わります。
| 年間の支払保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 30,000円以下 | 支払保険料の全額 |
| 30,000円超 60,000円以下 | 支払保険料×1/2+15,000円 |
| 60,000円超 120,000円以下 | 支払保険料×1/4+30,000円 |
| 120,000円超 | 一律60,000円 |
上限は4万円から6万円になりますが、3枠の合計の上限は12万円のままです。農林水産省・水産庁が財務省に出した令和9年度の税制改正要望書は、この上乗せを「令和8年・9年分所得税において講じられた」措置と書き、恒久化を求めています。2028年分以降どうなるかは、今後の税制改正で決まります。
国税庁の案内も要望書も、この上乗せを所得税の措置として書いています。住民税の一般生命保険料控除について上限28,000円が変わったという案内は、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。下の計算も住民税は28,000円のままで置いています。
一般の枠を6万円まで使い切った場合の、減る税金は次のとおりです(編集部計算)。
| 所得税率 | 減る税金(所得税6万円・住民税2.8万円) | 4万円の枠との差 |
|---|---|---|
| 5% | 5,863円 | +1,021円 |
| 10% | 8,926円 | +2,042円 |
| 20% | 15,052円 | +4,084円 |
| 23% | 16,890円 | +4,697円 |
| 33% | 23,016円 | +6,739円 |
この上限まで控除を受けるには、一般生命保険料を年12万円払う必要があります。年8万円から12万円に4万円増やして、税率20%の人で税金が4,084円減る計算です。4万円の保険料の約1割にあたります。
2011年までの契約(旧制度)
2011年12月31日以前の契約は旧制度で、所得税は保険料が年10万円を超えると一律5万円の控除、住民税は3.5万円が上限です。枠は一般生命保険料と個人年金保険料の2つで、医療保険も一般の枠に入ります(国税庁 No.1140)。
新旧の両方の契約がある場合、一般の枠で旧制度の保険料が年6万円を超えていれば旧制度の計算だけ(上限5万円)、6万円以下なら新旧の合計(上限4万円)になります。旧制度の契約を続けている人は、新しい契約を足しても控除が増えないことがあります。
旧制度の上限5万円・3.5万円で、税率20%なら減る税金は50,000円×20%×1.021+35,000円×10%=13,710円です(編集部計算)。
手続きと注意
- 会社員は年末調整で、保険会社から届く控除証明書を添えて申告する。自営業などは確定申告
- 保険期間が5年未満の契約などは、控除の対象にならない場合がある(国税庁 No.1140)
- 配当金や割戻金を受け取った場合は、支払保険料から差し引いて計算する
控除で戻る税金は、毎年確実に受け取れるお金です。ただ、額は上の表の範囲に収まります。保険の要否は、控除を抜いて考えても結論が変わらないかどうかで確かめるのが手堅い方法です。自分の年収で必要な保障額がどのくらいかは自分の数字で試算するで出せます。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1141「個人年金保険料控除の要件」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1141.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 総務省「個人住民税」(2026年10月14日確認) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
- 中央区「生命保険料控除・地震保険料控除」(2023年6月30日掲載、2026年10月14日確認) https://www.city.chuo.lg.jp/a0009/kurashi/zeikin/juuminzei/shotokukoujo/seimeihokenryo.html
- 農林水産省・水産庁「令和9年度税制改正要望事項(生命保険料控除制度の拡充の恒久化等)」(財務省ウェブサイト掲載、2026年10月14日確認) https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2027/request/maff/09y_maff_k_10.pdf
- 減る税金の実額、年収と所得税率の目安は、上記の税率・控除額表による編集部計算
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